工場の省エネ対策として、大規模な屋根の遮熱施工は予算も時間もかかります。しかし、空調室外機の遮熱対策は、短期間かつ低コストで施工可能でありながら、高い省エネ効果が期待できる非常に有効な手段です。
空調の室外機は、室内の熱を外部に放出する「熱交換」という重要な役割を担っています。しかし、夏場の強い直射日光に晒されたり、周辺のコンクリートからの輻射熱を受けたりすると、室外機本体が高温になってしまいます。
室外機が高温になると、熱を効率的に放出できなくなり(熱交換効率の低下)、コンプレッサーに余計な負荷がかかります。この負荷の増大が、結果として消費電力の増加につながるのです。特に、多くの空調設備を稼働させる工場や商業施設では、この電力ロスが大きなコスト負担となるため、室外機の温度上昇をいかに抑えるかが省エネの鍵となります。
室外機の天面や側面に専用の遮熱シートを貼り付けたり、遮熱塗料を塗布したりする方法です。太陽光を効率的に反射し、室外機本体の温度上昇を直接的に抑制します。マグネットタイプで取り付けが簡単なシートもあり、専門業者でなくとも短時間で施工できる手軽さが魅力です。
コストを抑えつつ、すぐに省エネ効果を実感したい場合に最適な対策と言えるでしょう。
室外機の上部や周囲に日除けとなる遮熱パネルやブラインドを設置する方法です。室外機に直接日差しが当たるのを防ぎ、周辺の温度上昇を緩和します。この際、室外機の吸込口や吹出口を塞いでしまわないよう、通気性を十分に確保することが重要です。
製品によっては室外機の劣化防止にもつながるため、長期的な視点での設備保護というメリットも期待できます。
室外機本体やその周辺に水を噴霧し、気化熱によって強制的に冷却する方法です。冷却効果そのものは非常に高いですが、継続的な水道代や電気代が発生します。
また、水道水に含まれる成分によるスケール(水垢)の付着や、定期的な清掃といったメンテナンス面の考慮も必要です。
複数の室外機が密集している場合、排出した熱風を再び吸い込む「ショートサーキット」が起こりがちです。これでは熱交換の効率が大きく低下してしまいます。
室外機に風向調整板(排熱ガイド)を取り付けて排気の流れを上や横に変え、熱い空気が吸気口に戻らないようにする対策も有効です。
夏場に高温・高圧になることを防止し、あわせてエネルギーを必要以上に消費せず省エネ効果を得たいという目的でSPACECOOLマグネットシートが導入されました。空調室外機の天面と全側面に施工したところ、7月~9月の夏場に表面温度が-5.5℃、消費電力は8%削減されました。
マグネットシートは短時間で容易に施工でき、施工費用自体も抑えられ、早期に投資回収が可能だった点も喜びの声としてあがっています。
SPACECOOLでは他にも、冷凍ユニット用室外機の電力使用量をSPACECOOLフィルムによって最大18%削減した事例や、屋上にある空調室外機へSPACECOOLマグネットシートを導入し、16.1%の電力削減効果を確認した実例もあります。
株式会社矢野の室外機ブラインドユニットは、パイプに遮光シートを張った製品で、日差しから盾を作り室外機周辺の温度上昇を抑制するものです。直射日光を遮れるため、室外機の劣化も防げるという副次的な効果も期待できます。
工場や事業所の空調室外機への遮熱対策は、大規模な工事を必要とせず、手軽に導入できる極めて効果的な省エネ施策です。室外機の温度上昇を抑えることで、空調効率の改善と消費電力の削減に直結し、電気代という直接的なコスト削減に貢献します。
さらに、省エネは企業の脱炭素経営やSDGsへの取り組みの一環としても重要です。本記事でご紹介した遮熱シートや日除けパネルなどを活用し、持続可能な事業運営に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。