暑熱対策を実施することで、企業と従業員の両方が健全に成長することができます。ここでは、なぜ企業が暑熱対策を行わなくてはならないのか、リスク管理の視点から解説します。
暑熱職場とは、熱中症のリスクがある職場のことです。基準となるのが暑さ指数(WBGT)でしょう。気温、湿度、気流、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境を総合的に評価した指標で、日常生活ではWBGT値28℃を超えると熱中症患者の発生率が急増する(※)としています。
労働環境では、「作業者に関する指針」として「労働者が熱に慣れ、その環境に適応できるかどうか」、及び作業内容などによって基準が定められています。定められた基準値を超えている場合は、労働環境の改善が必要。万が一対策をせず従業員が業務中に熱中症にかかった場合、損害賠償責任を負う、あるいは企業としての信頼を失墜してしまう可能性があるため注意しましょう。
企業として暑熱対策を行う重要性は、主に以下の3つです。
快適な労働環境があれば、従業員が前向きに働くことができ、職場全体の生産性が向上します。不慮の事故で生産がストップし、機会損失や企業としての信頼失墜を防ぐことも可能です。
また、従業員満足度が高まれば、従業員の離職率が下がり、求人に苦労することがなくなるでしょう。「従業員のことを考えてくれている企業」として社会的な信頼度や企業評価が高まり、優秀な人材を確保しやすくなるかもしれません。何より、意欲の高い状態が続くことで、企業としても大きく成長できる可能性が高まります。
労働契約法では、従業員が安心して健康に働けるよう「安全配慮義務」を定めています。具体的には、「作業環境への配慮」「作業時間などへの配慮」「健康管理」「労働衛生教育の実施」「応急処置」などについて企業に対策を求めています。
あくまで配慮義務のため、規定に違反しても刑事罰を受けたり罰金を請求されたりすることはありませんが、注意したいのは、従業員や家族に訴えられる可能性。実際に、平成28年1月21日に出された大阪高等裁判所の判決では、真夏の炎天下で作業を行い、熱中症で亡くなった事案について、企業側へ約3,600万円の賠償が命じられました(造園業熱中症死亡事件〈大阪高等裁判所 平成28年1月21日判決〉)。
暑熱対策を怠ることで、大切な従業員を失うリスクはもちろん、慰謝料の支払い、現場がストップすることで生じる損失、労働災害防止計画の見直し、メディアへの対応、社会的信用の失墜などさまざまな損失を抱えてしまいます。企業の責任として、暑熱対策は適切に行うことが大切です。
暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。