自然変動や地球温暖化などの影響により、気温が年々上昇。国内の平均気温は100年あたり1.28℃の割合で高くなって(※)おり、熱中症による死亡者数も高水準で推移しています。
暑さ指数(以下WBGT)とは、職場の熱中症リスクを把握するための世界的な指標です。指標をもとにすることで、適切な対策を取ることができます。
暑さ指数(WBGT)は「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略で、熱中症予防を目的とした指標です。1954年(昭和29年)にアメリカの海兵隊新兵訓練で熱中症リスクを判断するために開発されました。
日本では、1994年(平成5年)に(財)日本体育協会がガイドラインを発表。以降、WBGT値をベースにした各種情報提供を行っています。
数値は世界中どこでも同じ。日常生活では、WBGT値28℃を超えると熱中症患者の発生率が急増する(※)とされています。 気温、湿度、気流、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境を総合的に評価しているため、気温だけよりも体感に近い暑さを把握することが可能。数値は環境省の熱中症予防サイトや計測器などで確認できるため、熱中症予防策を検討する際にチェックしてみるのがおすすめです。
暑熱対策は、世界的な関心事です。労働者を守るために政府が働く時間を規制する国もあれば、設定された最高気温を超えた場合に保険金をもらえる「猛暑保険」を提供する国も。
その中で、アメリカは2024年8月14日、「国家暑熱戦略2024-2030」を発表。全米で記録的な暑さが続く中、米連邦政府として暑さに強く繁栄する国になるための指針を示しました。また、米国カリフォルニア州では、2023年に猛暑から地域社会を守るためのキャンペーンを実施。専用のWebサイトを立ち上げ、暑さ対策のコツや涼しい場所の情報提供などを行っています。
イギリスでは、ロンドン市内各所にクールスペースを設置。エアコンや飲料水などを置いて夏季期間中に無料開放しています。
企業には、従業員が安全かつ健康に労働できるように配慮する義務があります。熱中症対策もその一つです。しかし、令和5年度の職場での熱中症死傷者(死亡・休業4日以上)は、1,106人。前年比279人・34%増と大幅に増加(※)している点から見ても、国内では対策できていない企業が多いと見て良いでしょう。
原因は、「現場での温度変化を経営者が把握していない」「コストがかかる対策を重視していない」「個人の対策に任せている」ことなどにあります。中には「労働者が改善を求めても無視する」「労働者が倒れても労災申請を受け付けない」といった企業もあるようです。
しかし、日本では厚生労働省が事業者に、熱中症予防にWBGT値(暑さ指数)を活用するよう通達しています。それを無視して従業員が業務中に熱中症にかかり、企業に過失があると認められた場合は、安全配慮義務違反に問われてしまうので要注意。損害賠償責任を負う、あるいは企業としての信頼を失墜してしまう可能性があるため、WBGTを基準に対策を行うことが大切です。
暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。