建築用語で「陸(りく・ろく)」とは水平という意味を表すことから、「陸屋根」とは平らな屋根を指します。一般的な屋根とは異なり平らな形状になっていることから、例えば積雪が多い地域では雪の滑落リスクがないためあえて陸屋根を選択するケースもありますし、太陽光発電を多く搭載しやすいといった利点もあります。
陸屋根を採用した場合には、一般的に2階が暑くなりやすいというデメリットがあります。
例えば三角屋根の場合は、どのような断熱方法を採用するかによっても変わってくるものの、2階の上に小屋根空間があり、直接日射を受けにくい構造となっています。その反面、陸屋根の場合には2階の上部が直接的に日射にさらされされることになるために暑くなりやすいというわけです。
以上の点から、断熱を厚めに行い暑さへの対応を行っていくことが大切です。現在はさまざまな断熱材がありますので、その状況に合わせた断熱材を建築会社や工務店が選んで施工を行ってくれますが、もし気になる場合には念のため相談しておくことがおすすめです。
そのほかの対策としては、屋上緑化に取り組む、太陽光発電を屋上に設置するなどの方法があります。この対策によって、直接的な日射を防ぎある程度暑さの軽減が可能となります。
遮熱塗料を陸屋根に塗装した場合、防水層の表面温度を約10〜15℃低下させることが期待できます。ただ、陸屋根の室内側に断熱材が施工されている場合には室内の温度はほとんど変化がないとされています(断熱材が入っていない工場や倉庫の建物内の場合は温度低下が期待できます)。遮熱塗料として有名なものとしては、「GAINA(ガイナ)」があります。
太陽光を高いレベルで反射すると共に、素材が吸収した熱を効率よく逃すことによって、冷却効果を発揮する素材です。遮熱と放熱の能力に優れており、直射日光下でも素材の表面温度は周囲の気温よりも低くなります。ただし、新しい技術であるために、遮熱塗料と比較すると材料単価がやや高い傾向があります。
断熱材の施工によって、夏季の日射による熱の侵入を抑えます。また、冬季の熱損失を防いで暖房効果を高めるといった面や、屋根裏の結露やカビの発生を防止して建物の耐久性を高めるといった面もあります。ただし陸屋根は雨水が溜まりやすいことから、断熱材施工の際には防水層の施工精度と耐久性を確保するという点も重要なポイントとされています。
陸屋根に対して遮熱・暑さ対策を行った事例です。こちらの事例では、建物内の温度上昇抑制や、消費電力の削減を目的として、高機能な放射冷却機能付き防水シートであるイノベーションプルーフRRを施工しています。
施工後は、シート裏面の温度差が-20℃という効果が得られています。
陸屋根遮熱対策を行う際には、さまざまなポイントに注意する必要があります。
例えば遮熱対策として遮熱塗料や遮熱シートの施工を行うケースについては、既存の防水層や屋根材の種類、劣化状況、断熱材の有無などについて確認を行い、状況に合った材料や施工方法を選択することが大切です。場合によっては遮熱施工を行う前に補修などが必要になるケースもあります。
遮熱対策によって、省エネ基準やそれぞれの自治体の補助金制度の対象となるケースもありますので、条件を確認し、それを満たす材料や工法を選定することも大切です。また、行おうとしている遮熱施工が防水保証などに影響しないかどうかの事前確認も必要です。
あらかじめ、遮熱塗料や遮熱シートの耐用年数と保証について確認が必要です。保証期間は施工業者や材料メーカーによって異なるため、契約前に確認を行ってください。
また、陸屋根の場合は汚れが溜まることで遮熱効果が低下しますので、定期的な点検や清掃が必要となります。このように定期清掃や点検も重要であることから、施工後の定期点検やメンテナンスについても確認しておくことがおすすめです。
遮熱対策を行う場合に必要なコストを確認するのはもちろんですが、その施工による費用対効果についてもよく確認した上で施工を行うかを判断することもポイントのひとつです。特に遮熱塗料は一般的な塗料よりも割高となりますが、長期的なメンテナンスや光熱費、屋根寿命の延長などさまざまな視点から費用対効果を判断することが大切といえます。
こちらの記事では、陸屋根の遮熱対策について紹介してきました。
陸屋根にすることによって屋上の緑化が可能、太陽光発電を多く設置できる、雪の多い地方の場合には積もった雪が滑落しないなどさまざまなメリットが得られます。ただし、暑さという面ではデメリットがあるため、十分な対策を行っておくことが非常に重要なポイントといえます。
実際に暑さ対策を行う場合には、まずは現場調査からスタートし、見積もり、施工、効果測定という流れで進んでいきます。施工前にチェックしておきたいポイントについてもこちらの記事でご紹介していますので、契約をする前にさまざまな点を確認し、建物に合った材料と施工方法を選択することが大切です。
暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。