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スレート屋根の遮熱・暑さ対策

目次

スレート屋根の工場・倉庫が暑くなる原因

輻射熱がこもる

作業者の暑さの正体は、気温だけではありません。体は周囲の壁・天井から放たれる赤外線(長波放射)も熱として感じます。夏の直射で屋根が焼けると、天井・梁・ダクトなどの表面温度が上がり、そこが熱い壁となって作業者へ放射熱が降り注ぎます。この状態だと、温度計が示す気温より体感が数℃高くなります。とくにスレート屋根は遮熱層が乏しいため、午後になるほど天井面の平均放射温度(MRT)が上がり続け、空調が効いていても「じりじり暑い」感覚が消えません。放射は空気を介さず届くため、風量を増やしても根本解決になりにくいのが厄介な点です。

金属など熱を通しやすい素材でできている

波形スレート(繊維補強セメント)は薄く、熱抵抗が小さいため、日射で温度が短時間に上がります。金属折板屋根はさらに熱伝導が大きく、無断熱だと直下の小屋裏温度が一気に高騰します。どちらも「蓄熱→放熱」を繰り返すので、夕方以降も天井が熱を出し続け、作業終了時刻まで暑さが引きずられます。加えて、素地の色が濃い・汚れが多い・艶が失われている屋根は日射をより吸収しやすく、表面温度がさらに上振れします。

高天井や広い空間だと空調が効きにくい

倉庫や生産エリアは天井が高く容積も大きいため、暖かい空気が上部に溜まりやすく、上下で温度差が生じます。すると、床付近の温度は下がりにくいのに天井付近だけが過冷却されるため、空調の電力が無駄に消費されます。さらに、空調の吹き出しが人のいない高所を循環しているだけ、という配置ミスもよくあります。結果として「設定温度は低いのに現場は暑い」という、コストと快適性が両立しない状態に陥りがちです。

工場内の設備から熱が出て室温が上昇

機械のモーター、焼成・乾燥工程、コンプレッサー、照明、フォークリフトの充電器など、工場内には常時熱源があります。これらの顕熱は屋根からの侵入熱と合流し、室内に熱だまりを作ります。排熱ダクトや局所換気が弱いと、熱は上部に溜まって再び天井・梁を温め、放射熱となって人に戻ってくる悪循環が生じます。

スレート屋根の工場・倉庫の暑さ対策

遮熱シート

仕組み

アルミ蒸着などの低放射(εの低い)面で長波放射をはね返し、天井裏からの放射熱を大きく減らします。

効果の出方

同じ気温でも体感が下がりやすく、扇風機・スポットクーラーの効きが良くなります。

設計のポイント

片面を必ず空気層に面させること。全面密着は反射が機能しません。継ぎ目や配線まわりの隙間は放射の漏れ口になるため、連続性と気密性を丁寧に確保します。粉じんが多い現場は、落下粉塵で反射面の性能が落ちやすいので、防塵カバーや定期清掃の前提を置きましょう。

向いているケース

既存屋根の内側から施工したい/工事を止められない/軽量で荷重を増やしたくない。

放射冷却素材

仕組み

太陽光を強く反射しつつ、8〜13µm帯で高い熱放射を行い、日中でも屋根自体の温度上昇を抑えます。屋根表面が下がれば、天井・梁の温度も連鎖的に低下し、MRTが効率よく下がります。

現場メリット

無電力で“源流”の屋根温度を落とせるため、ピーク時間帯の暑さを鈍化。空調容量の上積みや電気工事に頼らず、既存の空調でも体感改善が狙えます。

設計のポイント

下地の素地調整(素地強度・含水・旧塗膜の状態)と、十分な日射反射率・熱放射率を満たす製品選定。沿岸・工業地帯は汚れによる反射率低下が早いので、洗浄容易性やメンテ周期を見込みます。高湿度・多雲の日は効果がやや鈍りますが、夏季の総合削減には寄与します。

向いているケース

屋根面そのものを冷やして放射の根本原因を断ちたい/ランニングコストを極小化したい。

遮熱塗装

仕組み

近赤外域の反射率を高め、かつ熱放射率も確保することで、屋根表面温度の上振れを抑えます。JIS規格に適合したクールルーフ塗料を選ぶと性能が読みやすく、耐候性の比較もしやすいです。

効果の出方

屋根の最高温度を大きく抑え、直下階の室温を数℃下げる事例が多数。色や意匠の自由度が比較的あり、広面積でも施工しやすいのが強みです。

設計のポイント

既存スレートの含水・素地強度、アスベスト含有の有無(古いスレート)を確認し、適切な下塗り・補修を実施。冬期は日射取得が減るため、暖房期のわずかな不利(ヒートペナルティ)も加味して、通年の省エネで評価します。

向いているケース

広面積を比較的短工期で施工したい/色の指定がある。

断熱材

仕組み

伝導・対流による熱の流れを抑え、屋根からの熱侵入を遅らせます。ピークの遅延・平準化に効くため、就業時間帯の体感を安定化できます。

効果の出方

単独でも一定の改善がありますが、輻射は止めきれないため、遮熱(内側の放射対策)と組み合わせると効果が高まります

設計のポイント

U値だけでなく、露点管理(結露)・防湿層の位置・気流止めの連続性を確保。耐火・耐薬品性、天井懸垂設備との干渉にも注意します。軽量化したい場合は吹付け断熱も選択肢ですが、のちのメンテナンス・配線変更のしやすさも合わせて検討しましょう。

向いているケース

通年の空調負荷を下げたい/冬も寒い。

スプリンクラー

仕組み

屋根面に散水して蒸発熱で温度を下げます。猛暑・ピーク時間帯に即効性が高い手段です。

効果の出方

稼働中は屋根温度が顕著に下がり、室温も連動して落ちます。既存設備(井水・再生水)が活用できるとコスト面の適合性が増します。

設計のポイント

必要散水量の調整(かけ過ぎは排水・腐食リスク)、水質(スケール・藻)、雨樋容量、屋根材の耐水性、凍結期の停止計画。屋内の湿度上昇が許容できるか、製品・工程に影響がないかも評価しましょう。自動制御(気温・日射連動)を入れると無駄打ちを防げます。

向いているケース

真夏のピークカットを狙いたい/他の対策を補助的に支えたい。

スレート屋根の遮熱対策まとめ

暑さの主原因は「放射」です。だからこそ、屋根そのものを冷やす対策が体感と省エネの両面で効きます。放射冷却素材は無電力で屋根温度を下げ、MRTを的確に落とせるため、初手としての費用対効果が高い選択肢です。そこに内側の遮熱シートで放射の回り込みを断ち、断熱材で伝導を抑えてピークを平らにする、この三層の組み合わせがスレート屋根の定石と言えます。屋根の状態や稼働を止められる時間、求める効果と予算に応じて、①放射冷却(外)→②遮熱(内)→③断熱(外皮)の順で積み上げると失敗が少なくなります。真夏の一時的な上振れにはスプリンクラーをピークカット装置として併用すれば、空調の無理な増強に頼らず、現場の快適性と電力コストのバランスを取りやすくなります。

最後にチェックポイントを3つ。

これだけで、同じ投資でも体感の差は大きく変わります。現場の暑さを作っている道筋を断つ順番で、賢く設計していきましょう。

屋根の冷却におすすめな
放射冷却素材をチェックしてみる

屋根の内側の暑さ対策
遮熱シートを見てみる

【目的別】
工場・倉庫の遮熱対策を比較

暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。