工場や倉庫などの暑さ対策に活用されている「放射冷却素材」は、近年、建物だけでなく身近な暑さ対策用品にも取り入れられています。その一つが、放射冷却素材「SPACECOOL」を生地に採用した「SPACECOOL日傘 Type2」です。
本ページでは番外編として、SPACECOOL日傘 Type2の特徴や、日傘にも活用されている放射冷却の仕組みについて紹介します。

SPACECOOL日傘 Type2は、SPACECOOL株式会社が展開している日傘です。
日傘の生地には、放射冷却素材「SPACECOOL」が使用されています。太陽光から受ける熱を抑えるだけでなく、素材が持つ熱を外へ逃がす放射冷却の仕組みを活用している点が特徴です。
日常的な暑さ対策用品の一つとして、2026年6月11日に発売されました。
放射冷却とは、物体が持っている熱を赤外線として外部へ放出する現象です。自然界でも起こっている現象で、物体は周囲との温度差などに応じて、常に熱を放出しています。
放射冷却素材は、この仕組みを利用しながら、太陽光から受ける熱の影響を抑えることを目的とした素材です。
SPACECOOLでは、太陽光を反射する機能と、素材が持つ熱を赤外線として放射する機能を組み合わせています。太陽熱の吸収を抑えつつ、内部にたまった熱を外へ逃がすことで、温度上昇を抑える仕組みです。
屋外にある物体は、太陽光を受けることで熱を吸収し、表面温度が上昇します。
例えば、夏場に屋外へ置かれた自動車や金属製品、建物の屋根などが熱くなるのも、太陽光から受けたエネルギーが熱として蓄積されるためです。
SPACECOOLは、太陽光に含まれるエネルギーを反射し、素材が吸収する熱を抑える構造になっています。
日傘に使用した場合も、生地に当たる太陽光を反射するため、生地自体が熱を持ちにくくなる効果が期待されます。直射日光を遮るだけでなく、日傘そのものが受ける熱の影響を抑えるという考え方です。
SPACECOOLには、太陽光を反射するだけでなく、素材が持つ熱を赤外線として外部へ放射する性質もあります。物体が受けた熱を外部へ逃がすことで、熱が内部にたまり続ける状態を防ぐ仕組みです。
一般的な遮熱対策では、太陽光を反射して熱を入りにくくする方法が多く用いられます。一方、放射冷却素材では「熱を受けにくくすること」と「持っている熱を逃がすこと」の両方を利用します。
また、こうした機能は電力を必要としません。ファンや空調設備のように電気を使って温度を下げる方法とは異なり、素材そのものの特性を利用して熱の影響を抑える点も大きな特徴です。
SPACECOOL日傘 Type2には、放射冷却素材の特性に加えて、日傘として使用する際に求められる遮熱性や遮光性、紫外線遮蔽性能が備えられています。日傘を使用する目的は、直射日光を避けることだけではありません。日射による暑さをやわらげたり、紫外線を避けたりするためにも使用されます。
SPACECOOL日傘 Type2では、こうした一般的な日傘の機能に加え、放射冷却素材を取り入れることで、暑さ対策を考えた製品として設計されています。
SPACECOOL日傘 Type2は、一般財団法人カケンテストセンターによる遮熱性試験(JIS L 1951)において、遮熱率76~80%という結果が確認されました。
遮熱率とは、太陽光などから受ける熱をどの程度抑えられるかを示す指標の一つです。
公表されている試験結果によると、カラーによって数値に違いがあり、シルバータイプでは遮熱率80%とされています。
ただし、実際に使用した際の体感温度は、気温や湿度、風の有無、日射の強さなどによって変わります。試験結果の数値が、あらゆる環境で同じ体感につながるわけではありません。あくまで一定の試験条件下で確認された性能として見る必要があります。
2026年5月に大阪市内で実施された屋外試験では、SPACECOOL日傘 Type2を使用した場合と、日傘を使用していない場合の頭頂部温度を比較しました。
その結果、SPACECOOL日傘 Type2を使用した場合は、使用していない場合と比べて、頭頂部温度が約6℃低いという結果が確認されています。
日傘を使用することで直射日光を避けられるため、頭部周辺が日射の影響を受けにくくなります。SPACECOOL日傘 Type2は、放射冷却素材を生地に採用しており、日傘自体が受ける熱の影響をさらに効果的に抑える設計です。
なお、この試験結果についても、実際の温度差は気温や湿度、風量、日射量、使用する場所などによって異なります。すべての使用環境において約6℃の差が生じることを示すものではないため、環境条件とあわせて認識しておくことが大切です。
SPACECOOL日傘 Type2は、遮熱性能に加えて、高い遮光性や紫外線遮蔽性能も備えています。公表されている試験結果では、遮光率は99.99%以上、紫外線遮蔽率は99.9~100%とされています。(※)
太陽光をどの程度遮ることができるかに加えて、紫外線をどの程度遮蔽できるかも、日傘の性能を見る際の一つの指標です。
暑さへの対策だけでなく、日差しや紫外線を避ける目的でも使用できる仕様となっています。
放射冷却素材「SPACECOOL」が使用されているのは、日傘のような身近な製品だけにとどまりません。工場や倉庫などの建物、屋外設備、建設資材などにも広く活用されています。
日傘と建物では大きさも使用目的も異なりますが、太陽光を受ける場所で熱の影響を抑えるという基本原理は共通しています。
とくに工場や倉庫では、長時間にわたって太陽光を受けることで屋根表面が高温になり、その熱が室内へ伝わるケースが少なくありません。そのため、屋根そのものが受ける熱を抑える有効な手段として、放射冷却素材を取り入れた製品が導入されています。
SPACECOOLを使用した建物向け製品の一つに、「SPACECOOLルーフシェード」があります。主に折板屋根などの上部に設置し、屋根が直接受ける太陽光の影響を抑えるための製品です。
工場や倉庫の中には、屋根の面積が広く、日射による熱の影響を受けやすい建物が多く存在します。屋根表面の温度が上がると、その熱が屋根材を通して建物内部へ伝わり、室内の暑さ悪化につながる場合があります。
SPACECOOLルーフシェードは、屋根の上で太陽光を反射しながら熱を放射することで、屋根に伝わる熱を抑える役割を果たします。空調設備だけに頼るのではなく、建物の外側で熱の影響を抑える抜本的な暑さ対策として活用されています。
SPACECOOLは、陸屋根などに使用される建設資材にも採用実績があります。
例えば、防水シートとSPACECOOLを組み合わせた製品では、建物の防水機能を確保しつつ、屋根表面が受ける太陽光の影響を抑えることを目的としています。
陸屋根は屋根面が比較的平らで日射を受ける面積も大きくなりやすいため、夏場には表面温度が著しく上昇することがあります。
こうした屋根に放射冷却素材を取り入れることで、建物内部へ伝わる熱の低減を図るというアプローチです。
日傘が「人が受ける日射の影響を抑える」のに対し、建設資材では「建物が受ける熱の影響を抑える」ために機能します。
用途は異なりますが、太陽光から受ける熱を抑え、素材が持つ熱を外部へ放射するという根幹の仕組みは共通しています。
「放射冷却素材」という言葉を聞くと、工場や倉庫の屋根など、大規模な建物にのみ使用される特殊な技術をイメージする方もいるかもしれません。
しかし、SPACECOOL日傘 Type2のように、現在では日常生活で使用する製品にも放射冷却技術の導入が進んでいます。
日傘では太陽光を遮りながら暑さの影響を抑え、工場や倉庫では屋根から建物内部へ伝わる熱を抑える目的で機能します。対象が「人」と「建物」で異なるだけで、どちらも太陽光による熱の影響を抑えるために放射冷却の仕組みを利用している点は同じです。
このように、放射冷却素材は建築分野に限らず、身近な暑さ対策用品を含む幅広い分野へと利用の幅を広げています。
工場や倉庫における暑さ対策を検討する際も、空調設備や断熱材などの内側の対策とあわせて、屋根や建物の外側で熱の影響を抑える方法の一つとして、ぜひ放射冷却素材の活用をご検討ください。
暑さ対策にはさまざまな方法がありますが、工場・倉庫でまず行いたいのが遮熱対策です。遮熱とは、外の熱が室内に入るのを防ぐことです。
夏場の強い太陽光によって屋根や外壁は非常に暑くなりますが、遮熱対策をすることで、その熱が室内に伝わらないようにすることができます。工場・倉庫では、特に熱を持ちやすい「屋根」「窓」「機械」に遮熱対策をするのがおすすめ。以下で詳しく見ていきましょう。